「そうなんですね」
最近気になる言い回しがこれ。半疑問形の一種だろうか。
最初に耳にしたのは去年のことだった。そのとき非常に違和感があったのでよく憶えている。それからたまに聞くようになったので、どうやらこの言い回しが流行っているとまでは言わなくても定着しつつあるようだ。
どんな場面で耳にするかというと、何か困った問題を抱えている人が、助力を期待できる相手に事情を伝えたときに返ってくる。一見、理解や共感を示しており、しかも柔らかいニュアンスがある。しかし「わかりました、力になりましょう」という発言者の意思や頼もしさを感じないので、肩透かしを食らったような気持ちが残る。
これまでならそういう場面では「そうなんですか」あるいは「なるほど」などといった言葉が使われていたと思う。自分ならたぶんそういう言葉を選ぶ。これらはどこか距離がある。あくまで他人事として見ているような冷静さがある。こちらのほうがプロフェッショナルだ。
対して「そうなんですね」はこちらの訴えを受容しているようで、ぬらりとかわしてスッと懐に入られるような間合いの近さがある。他人のやさしさに飢えている人はこれでコロッといってしまうかもしれない。
僕のような人間はそういう間合いの近さに警戒心を持ってしまう。敵意を見せない人間が味方であるとはかぎらないからだ。
そしてそういう読みはたいてい当たっているのだ。